クルーズ旅行には多くの喜びがある一方で、やはり大変だった思い出も存在します。まず一つに挙げられるのは、長期の船旅にありがちな「揺れ」と体調管理の難しさです。私が乗船した時期は比較的天候に恵まれていたものの、海上では天気が急変しやすく、夜中に大きな揺れを感じることもありました。最初の数日は特に船酔いがひどく、食事の時間も部屋でじっとしていなければならないこともありました。酔い止めの薬を飲んでも、完全に症状が抑えられるわけではなく、波が高い日はデッキに出るだけでも危険を感じるほどでした。
また、船内で生活するうえで想定外に感じたのが、多くの乗客が一斉に移動する際の混雑です。特に寄港地観光から戻ってくる時間帯や、人気のあるショーが終わった直後などは、エレベーターや通路、レストランが一気に混み合い、思うように移動できないストレスを感じることがありました。寄港地観光の集合時間に遅れたくないのにエレベーターが全然来ず、階段を急いで駆け下りる羽目になったり、ビュッフェレストランで座る場所を見つけるのに苦労したりといった経験もしました。広大な客船とはいえ、一度に数千人が乗り込むわけですから、どうしても混雑が発生してしまうのは避けられません。
さらに、豪華なクルーズといえども、ある程度の「閉鎖空間」であることには変わりありません。長期滞在をするにつれ、部屋の空間や船内の限られた場所で過ごすことに少し息苦しさを感じる瞬間もありました。もちろん、外には無限に広がる海があるとはいえ、下船できるのは寄港地での限られた時間だけ。陸にいる時なら気分転換にいつでも好きな場所へ行ける自由があるけれど、船旅の場合はそれができないので、船内生活が長引くと少し不安やストレスが高まってしまうこともありました。
そして何より大変だったのは、通信環境の問題です。クルーズ船内では基本的にインターネット環境が限られ、高速Wi-Fiを使いたい場合は別料金がかかることがほとんどです。いざ使ってみても速度が遅く、メールをチェックするくらいならまだしも、大きなデータを送受信したり動画をストリーミング視聴したりするのはかなり厳しかったです。仕事の連絡が必要なタイミングや、家族とのビデオ通話を予定していた場合には困ることも多く、結局、寄港地に到着してから街中のカフェや施設のWi-Fiを頼らざるを得ませんでした。普段は当たり前のように使っているネット環境が制限されると、現代人としては想像以上の不便を感じるものです。
また、言葉の問題も大きなハードルでした。船内の公用語は主に英語であり、日本語対応のスタッフやツアーが用意されているとはいえ、細かいトラブルや問い合わせをする際には英語で説明しなければならない場面が多々ありました。私の場合、ある日客室のエアコンがうまく動かなくなり、フロントに電話で説明しようとしたのですが、専門的な言葉がわからず苦戦しました。スタッフも親切ではあるものの、やはり細かいニュアンスが伝わりきらず、修理対応に少し時間がかかってしまいました。こうした言葉の壁は、海外での旅行の醍醐味でもありますが、ときに大変さを痛感させる要因にもなるものです。
さらに、クルーズ代金そのものは「オールインクルーシブ」的な要素が強いですが、実際に乗ってみると追加費用が意外とかさむことにも気づきました。特別なレストランでの食事、アルコールやカクテル、寄港地でのオプショナルツアー、船内での有料イベントなど、誘惑は多岐にわたります。最初は「せっかくのクルーズだから」という気持ちで楽しんでいると、あとでまとめて請求書を見た時に予想以上の金額になっていて冷や汗をかくこともありました。とくに寄港地観光のオプショナルツアーは、現地での食事や体験がセットになっているため魅力的ですが、何度も参加しているとかなりの出費になってしまいます。
こうした大変な面はあったものの、それも含めてクルーズ旅行の醍醐味だと今では思えます。船酔いや混雑、閉鎖空間でのストレス、通信環境の制限、言葉の壁、そして想定外の出費。それらを乗り越えるために工夫したことや、改めて自分の生活スタイルを見直すきっかけにもなりました。例えば、旅の途中で多少不便を感じても、時間と心に余裕を持つことで楽しめるものが変わってくることに気づかされたのです。寄港地でインターネットを利用する時間を工夫したり、船酔い対策のためのグッズを携帯したり、混雑を避けるために早めに行動したりと、多少の負担はあっても、それを超える体験や思い出が得られるのがクルーズの魅力でもあります。
結果として、そんな苦労やトラブルもあとから振り返ると良い思い出になり、クルーズならではの学びとして心に刻まれました。
不便さを受け入れることで、かえって船旅の醍醐味を深く味わうことができたのは、今でも忘れられない経験です。
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